その割安、本物?

バリュートラップ判定

判定の根拠を全部置いておく頁です

この手のツールでいちばん危ないのは、どう計算したか分からないスコアが出ることです。 「割安の質 62点」とだけ出されても、その62がどこから来たのかが分からなければ、 あなたはそれを検算できません。だからここに式としきい値を全部書いています。 納得できない線があれば、その軸を無視してください。

判定エンジン v1.0(見直し 2026-09-02)

1. 使っている2つの式

このツールが立っている足場です。ここが崩れれば、判定も崩れます。

PBR = PER × ROE(恒等式)

株価 ÷ BPS =(株価 ÷ EPS)×(EPS ÷ BPS)。約分すれば必ず一致します。近似でも経験則でもありません。 だからPBRが低い理由は、PERが低いか、ROEが低いか、その2つしかありません。 このツールは、その内訳を対数で分けて表示しています。

妥当PBR = ROE ÷ 資本コスト

残余利益モデル PBR = 1 +(ROE − r)÷(r − g)に g = 0 を入れた形です。「いまの利益が増えも減りもせず、ずっと続く」という強い仮定を置いています。伸びている会社ではこの目安は低く出すぎ、縮んでいる会社では高く出すぎます。 ④の軸(EPSの推移)を別に置いているのは、この仮定が崩れていないかを確かめるためです。 資本コスト r は正解が存在せず、あなたが選んだ値(6% / 8% / 10%)で妥当PBRは動きます。

2. 割安の入口

PBR 1.0倍未満か、実績PER 15倍未満。どちらにも当たらなければ「そもそも割安ではない」と表示して、割安の質は問いません。

低PERでも低PBRでもない銘柄に「その割安は本物か」と問うても意味がないので、 入口に立っていない場合は判定そのものを出しません。 低PBRの内訳を分けるときの基準PBRは、基準PER 15倍 × 資本コストで作っています。

3. 5つの軸としきい値

どこで色が変わるか。

強い注意気になる問題なし
① 割安の理由ROEが0以下、または ROE < 資本コスト かつ 実際のPBR ≧ 妥当PBRROE < 資本コスト だが 実際のPBR < 妥当PBRROE ≧ 資本コスト
② 低PERの中身会社予想EPSが実績の70%未満、または 当期純利益 > 経常利益会社予想EPSが実績の90%未満、または 当期純利益 > 経常利益の85%、または 当期純利益 > 営業利益の120%上のどれにも当たらない
③ 純資産の質(のれん+繰延税金資産) ≧ 自己資本の50%、または 自己資本比率 < 20%、または 流動比率 < 80%(のれん+繰延税金資産) ≧ 自己資本の30%、または 自己資本比率 < 30%、または 流動比率 < 100%上のどれにも当たらない
④ 利益の推移EPSの2期年率が −5%以下EPSの2期年率が +2%未満EPSの2期年率が +2%以上
⑤ きっかけチェックした引き金が01つ2つ以上

材料が入っていない軸は「判定していません」になり、点数の分母からも外れます。 0点として数えると、入力が少ないほど良い判定が出てしまうためです。

4. それぞれの軸の狙い

各軸をなぜ見ているのか。

① その低PBRは、稼ぐ力の低さで説明がついてしまわないか

PBR = PER × ROE。ROEが資本コストを下回っている会社のPBRは、そもそも1倍を割るのが理屈に合っています。妥当PBR(= ROE ÷ 資本コスト)より実際のPBRが高ければ、それは「安い」のではなく「稼げないぶん、そう値付けされている」だけです。

重み 30 / 100

② その低PERは、来期には消える一過性の利益で作られていないか

固定資産の売却益や関係会社株式の売却益、繰延税金資産の計上で当期純利益がふくらむと、実績PERだけが低く出ます。翌期にその利益は繰り返されないので、PERは何もしていないのに元の水準に戻ります。

重み 22 / 100

③ そのPBRの分母(純資産)は、そのまま信じてよい中身か

PBRの分母は純資産です。その純資産の半分がのれんや繰延税金資産なら、減損や取り崩しで分母は一晩で縮みます。分母が縮めばPBRは跳ね上がります。自己資本比率と流動比率も、割安が解消される前に体力が尽きないかを見るために置いています。

重み 20 / 100

④ 利益は伸びているのか、それとも縮み続けているのか

妥当PBRの式は「いまの利益が続く」ことを前提にしています。EPSが毎期削れている会社では、いま計算した妥当PBRも来期には下がります。株価が動かなくてもPBRが下がり続けるのは、この形です。

重み 16 / 100

⑤ 割安が見直される引き金が、いま出ているか

割安が割安のまま何年も続くのは、それを直す動きが会社の側から出ていないときです。自社株買い・増配・東証のPBR改革対応・政策保有株の縮減・事業再編・親子上場の解消。どれかが出ている会社と、ひとつも出ていない会社では、待つ意味がまるで違います。

重み 12 / 100

5. 会社の性質による格下げ

同じ形でも、業種によっては正常なことがあります。消すのではなく、理由を書いて1段階下げます。

一般の事業会社

製造・小売・サービスなど。格下げは効きません。

市況・景気敏感(海運/鉄鋼/資源/半導体/商社)

好況の山でいちばんPERが低く見えます。市況株の低PERは「割安になった」ではなく「利益がピークにある」ことのほうが多く、格下げではなく注意を強めます。

不動産・インフラ

土地を古い簿価で持っているため、純資産が実態より小さく出ます。借入で資産を持つことが事業なので自己資本比率も低めです。低PBRと低い自己資本比率を1段階格下げします。

持株会社・複数事業のコングロマリット

上場子会社の株が取得原価で載っていると純資産は実態より小さく出ます。事業が多いほど市場は割り引いて見ます。低PBRの判定を1段階格下げします。

銀行・保険・証券

自己資本比率も流動比率も他業種と同じ物差しでは読めません。純資産の質の軸は判定対象から外します。PBR1倍割れが常態なので低PBRの判定も1段階格下げします。

6. 引き金(カタリスト)の確認先

どこを見ればチェックできるか。

自社株買いを発表している

適時開示の「自己株式取得に係る事項の決定」。発行済株式数の1%未満の小規模なものは数えない。

増配・累進配当・配当性向の引き上げを表明している

決算短信の配当予想、中期経営計画の株主還元方針。

「資本コストや株価を意識した経営」の開示をしている

東証の要請に対する開示。東証が公表している対応企業一覧、または会社のIRページ。

政策保有株の縮減を進めている

コーポレート・ガバナンス報告書、有価証券報告書の政策保有株式の記載。

不採算事業の撤退・売却・構造改革を発表している

適時開示、中期経営計画。

親子上場の解消・MBO・アクティビストの大量保有がある

大量保有報告書(EDINET)、適時開示。

7. このツールが見ていないもの

ここに書いていないものは、このツールは1つも見ていません。

営業キャッシュフローと有利子負債の実額、配当利回りと配当性向、セグメント別の中身、 訴訟・規制・許認可、取引先や販売先の集中、経営陣と資本構成、株主構成、 同業他社とのバリュエーション比較、そして株価そのものの動き。 どれも割安が罠かどうかを決める重要な材料ですが、このツールは1つも見ていません。灯が1つも点かないことは「買ってよい」を意味しません。見ている5つの角度で、目立つ危険信号が出ていないというだけです。
判定する
これは相場や業績の予測ではなく、過去の決算数値の整理です。 ここで出しているのは、あなたが入力した株価・EPS・BPS・決算の金額を決められた式に入れた結果だけです。「万年割安」と出ても、その株が永遠に上がらないという意味ではありません。自社株買い・増配・東証のPBR改革への対応・政策保有株の縮減・事業再編・親子上場の解消といった引き金が出れば、 同じ会社の評価は変わります。判定に使った妥当PBRも「いまの利益が増えも減りもせず続く」という仮定を置いた目安で、 成長する会社では低く出すぎます。 逆に、灯がひとつもつかない会社が買いという意味でもありません(このツールは5つの角度しか見ていません。 訴訟・規制・取引先の集中・経営陣の姿勢はひとつも見ていません)。 判定は「決算資料と適時開示を自分で読み直す合図」として使ってください。売買や個別銘柄の推奨ではありません。